伯爵令妹の恋は憂鬱
*
翌日、ドーレ男爵家の馬車に乗り、トマスとマルティナとディルクはクレムラート伯爵家に向かった。
マルティナは若干ふくれ面だ。
せっかく格好つけて伯爵家を出てきたというのに、こんなにすぐに顔を見に行く羽目になるとは思わなかった。
だが、「ちゃんとご挨拶しないと、フリード様に申し訳が立ちません」とトマスに言われては応じないわけにもいかない。
「二人は少し後から来てください。落ち込んでいるフリード様も見ものですからね」と笑うのはディルクで、忠実な側近の意外な茶目っ気を初めて見たマルティナは驚いた。
屋敷につくと馬車を降りる前から玄関口にフリードがやってきて、先に降りたディルクに「おいディルク、どうだマルティナの様子は」と詰め寄ってくる。
「思ったより清々しい様子でしたよ」
「は? トマスは何て返事をしたんだ。あいつが冷たく突き放すとは思わないが、時期が早すぎる。マルティナを突き放したりしていないだろうな、おいディルク!」
ディルクはついに噴き出して、背後の馬車を指さした。
「ご自分で確認なさるといいですよ。一緒に来ています」
「は?」
ディルクの首根っこから手を離したフリードは、トマスの手を借りて馬車を降りてくるマルティナを見つけた。
「マルティナ」
「おにいさ……じゃない、伯爵様、あの、えっと」
「お兄様のままでいい。お前は俺の妹だ」
マルティナは笑顔を見せた後、隣のトマスを見つめる。トマスは、フリードに大きく頭を下げた。
翌日、ドーレ男爵家の馬車に乗り、トマスとマルティナとディルクはクレムラート伯爵家に向かった。
マルティナは若干ふくれ面だ。
せっかく格好つけて伯爵家を出てきたというのに、こんなにすぐに顔を見に行く羽目になるとは思わなかった。
だが、「ちゃんとご挨拶しないと、フリード様に申し訳が立ちません」とトマスに言われては応じないわけにもいかない。
「二人は少し後から来てください。落ち込んでいるフリード様も見ものですからね」と笑うのはディルクで、忠実な側近の意外な茶目っ気を初めて見たマルティナは驚いた。
屋敷につくと馬車を降りる前から玄関口にフリードがやってきて、先に降りたディルクに「おいディルク、どうだマルティナの様子は」と詰め寄ってくる。
「思ったより清々しい様子でしたよ」
「は? トマスは何て返事をしたんだ。あいつが冷たく突き放すとは思わないが、時期が早すぎる。マルティナを突き放したりしていないだろうな、おいディルク!」
ディルクはついに噴き出して、背後の馬車を指さした。
「ご自分で確認なさるといいですよ。一緒に来ています」
「は?」
ディルクの首根っこから手を離したフリードは、トマスの手を借りて馬車を降りてくるマルティナを見つけた。
「マルティナ」
「おにいさ……じゃない、伯爵様、あの、えっと」
「お兄様のままでいい。お前は俺の妹だ」
マルティナは笑顔を見せた後、隣のトマスを見つめる。トマスは、フリードに大きく頭を下げた。