伯爵令妹の恋は憂鬱


「フリード様。まだ全然、顔を見せられるような成果は上げていなくて恐縮ですが、許可をいただきに参りました。……マルティナ様を俺にください」

「……やるもなにも、マルティナのほうからいったんだ。どうにもならないだろう。……俺のほうが頼むべきだろうな。お前がもらってやらないと、マルティナは修道院にでも入ってしまいそうだ。かわいい妹を俗世から離したくはないんでな。頼んだぞ、トマス」

「はい!」


迷いなく答えたトマスに、マルティナは嬉しくてたまらなかった。
彼の腕にしがみついて喜んでいると、フリードの背後からとげとげしい声が聞こえた。


「あーやだやだ。ロリコンっているんだよねー」


顔をしかめて近づいてくるのはミフェルだ。


「これはミフェル様。噂でお勤めを始めたと聞きましたが本当だったのですね」


トマスはにこやかに応対したが、額に青筋が立っているのをマルティナは見逃さなかった。


「そうだね。せっかく僕も結婚に向けて考えを改めたんだけど、まあ仕方ないよね、マルティナに見る目がないんだ」

「その言葉、数年後には後悔させてやりますよ」


笑顔のまま、結構な言葉を言い返すトマスは、実はこれまではずいぶんと我慢していたのかもしれない。
トマスの初めて見る面がたくさんあるけれど、それが不満なことはない。むしろもっと好きになる。

やがてエルナの泣き声が響いて、玄関前の攻防は中断された。


「まあ入れ。積もる話は中でだ」


とフリードがいい、一行はエミーリアの待つ応接室へと入ったのだ。
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