伯爵令妹の恋は憂鬱
相も変わらずズケズケと思った通りを口にするミフェルの頭を、フリードが後ろから小突いた。
「お前は少し口のきき方を覚えろ。負けは負けと素直に認めなければ成長などできんぞ」
「痛っ。伯爵、手加減してよ」
「知るか。手加減される年齢じゃないことを自覚しろ。お前はすべてにおいて、考えが幼いんだ」
「ちぇっ」
不貞腐れたミフェルはソファの端でそっぽを向く。マルティナは話題の対象が自分であることが落ち着かず、困って隣に座るトマスを見上げた。
トマスはマルティナを安心させるように笑顔を向ける。
「で、結婚式はどうするの?」
またもエミーリアが言い出し、トマスが苦笑して、マルティナの手をそっと握る。
「大変申し訳ないとは思うんですが」と前置きし、フリードのほうを向いた。
「式は、もう少し後にするつもりです」
「え?」
エミーリアは咄嗟にマルティナのほうを見つめる。
マルティナは小さくうなずいた。
昨晩、マルティナはトマスからプロポーズをされた。
そして同時に、この話もされたのだ。