伯爵令妹の恋は憂鬱
まだ十七歳だ。母親となるには早い年齢だし、ひとつひとつ、しっかりクリアさせてから次に臨ませてやりたい。
そう思えば、夜の生活は我慢せざるを得ない。
『最近、仕事が忙しいから夜は先に眠っていて』
そんな言葉でごまかして突入した禁欲生活は、かれこれ二週間ほどになる。
彼女が不安に思わないよう、彼女が目を覚ます前には隣に入り腕枕をし、優しいキスで挨拶をする。生殺しとはこのことである。
(……ギュンター様に知られたら笑われるな)
いつだったか「我慢が好きな男だな」と笑われたことを思い出し苦笑する。
だが、マルティナを大事にしたいと思えば、ほかの方法は思いつかなかった。
頑張り屋な彼女が納得して、隣で幸せそうに笑っていてくれるように心を尽くすことが、今の自分にできることだと信じて疑わない。
結局のところ、トマスの心根は従者のときと少しも変わっていない。彼女のために自分を押し殺すほうが、彼にとっては自然なのだ。