伯爵令妹の恋は憂鬱

まだ十七歳だ。母親となるには早い年齢だし、ひとつひとつ、しっかりクリアさせてから次に臨ませてやりたい。
そう思えば、夜の生活は我慢せざるを得ない。


『最近、仕事が忙しいから夜は先に眠っていて』


そんな言葉でごまかして突入した禁欲生活は、かれこれ二週間ほどになる。

彼女が不安に思わないよう、彼女が目を覚ます前には隣に入り腕枕をし、優しいキスで挨拶をする。生殺しとはこのことである。


(……ギュンター様に知られたら笑われるな)


いつだったか「我慢が好きな男だな」と笑われたことを思い出し苦笑する。

だが、マルティナを大事にしたいと思えば、ほかの方法は思いつかなかった。

頑張り屋な彼女が納得して、隣で幸せそうに笑っていてくれるように心を尽くすことが、今の自分にできることだと信じて疑わない。

結局のところ、トマスの心根は従者のときと少しも変わっていない。彼女のために自分を押し殺すほうが、彼にとっては自然なのだ。

< 171 / 184 >

この作品をシェア

pagetop