伯爵令妹の恋は憂鬱
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一方のマルティナは、食後、湯あみを終え着替えをマーヤに手伝ってもらっている。
「旦那様、お怒りじゃなかったですかね?」
「どうして怒るの?」
濡れた髪を拭きながらマルティナがきょとんとする。
「だって、奥様にお仕着せを着せるなんて……すごく変な顔をしていましたもん。ああやっぱりお止めするべきでした」
「そんな。……もし怒っていたとしても、マーヤは悪くないわ。私が自分から着たんですもん」
そういいつつ、マルティナは心配になる。
トマスの妻となり貴族社会を飛び出した今、マルティナはできるだけ質素に暮らしたいと思っていた。
彼が会社の代表として表に出るときは、その配偶者としてドレスをまとい社交に出ることもあるだろうが、家では昔のような着飾って何もしない暮らしはしたくなかった。
マルティナは教会の聖歌隊で一緒のブリギッテを尊敬している。
いつも元気で明るくて、誰にでも優しい。お腹にも赤ちゃんがいるというのに、小さな子供ふたりをたくましく育てている。
教会からの帰りには、今日の夕飯用だと言って市場で買い物をしている。五歳と三歳の子供たちも小さな手に荷物を抱えて一生懸命母親を手伝っているのだ。
(あんな小さい子たちだって自分にできることをするんだもの。私だって……)
掃除も、料理も、裁縫も何でもできるようになりたい。
そしていつか、トマスとの赤ちゃんを、自分の手で育てていきたいのだ。