伯爵令妹の恋は憂鬱



「トマス……!」


上半身を一気に起こす。マルティナは汗だくになった夜着の胸のあたりをかきむしり、瞬きを繰り返す。


「……夢?」



小刻みに息を吐き出して、呼吸を整える。その間も、涙がボロボロと頬を伝っていった。

「嫌な夢……」


夢だったことにほっとしたのと同時に、隣にぬくもりをくれる彼がいないことに気づいてまた悲しくなる。


「……っふっ、えっ」


窓からは月明かりが差し込んでいる。月の位置から見て夜中であることは間違いない。
自分が寝てしまってからどのくらい時間がたったかはわからないが、湯あみだけならこんなに遅いはずはない。
やはり、トマスは自分と一緒に寝るのも嫌なのだ。


「ええっ。えっ」


ようやく彼の奥さんになれたのに、要領が悪く、家のことも上手にできない。
まして妻としての役目すら、果たせない。いつトマスに愛想をつかされてもおかしくない。
夢のせいで不安が増し、マルティナはあふれ出る涙を止めることができなかった。

ひとしきり泣き続けていると、廊下の向こうから音がした。
と、ドアが開き、廊下の明かりが部屋に差し込んでくる。
息を切らせたトマスがガウンを羽織った状態でそこにいた。
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