伯爵令妹の恋は憂鬱
「嫌なんかじゃありません。嬉しくて。でも私、あのくらいですぐ倒れてしまうのが情けなくて。……トマスみたいに、何でもできるようになりたかったの。……いつか、ブリギッテみたいなお母さんになりたくて……」
トマスはマルティナの口を塞いだ。
「わかってる。頑張っているのを認めてないわけじゃないんだ。……でも、もし俺のわがままを聞いてくれる気があるなら。俺だけのマルティナの日を作って。朝から晩まで、俺の腕の中にいて」
タガが外れたようにキスの雨を降らす夫を、マルティナは潤んだ瞳で見上げた。
嫌われてなんかなかった。
だけど、彼がこれほどの我慢をしていたとは思わず、驚くばかりで。
マルティナはおずおずと彼の頬に触れた。そうして自分から軽いキスを贈る。
「私はトマスが一番好きです。どんなに疲れていてもあなたに触られるのは嬉しいです。私こそごめんなさい。気を使ってもらっていたなんて思わなくて。……これからは時間を決めて少しずつ仕事を覚えていきます。……だから、その、我慢なんてしないでください」
言いながら恥ずかしそうに目をそらすマルティナに、トマスは理性を放り投げた。
「……あーもう。ごめん、今日もたぶん止まんない」