青春カラス
「さっきまで横にいた、学ラン姿のヤツだよ」
「え? 私、カラスと話はしてたけれど、学ラン姿の男の子なんて見ていないよ?」
「でも、さっきまで一緒に。っていうか、カラス話してたって何だよ?」
「あのね、信じてくれないかも知れないけれど、さっきまでここで、カラスが青春してたの。思わず近づいたら、日本語喋ったの」
「……なあ、頭大丈夫か?」
怪訝そうな顔をする彼。それでも私は話を続ける。
「そのカラス、前世が人間で、彼女とケンカしたまま死んじゃったんだって。だから、後悔してるって言ってたの。だから、ごめんなさい」
困惑しまくりの彼の顔が私の瞳に映る。
そりゃ困惑もするだろう。
自分の彼女が、カラスと喋ってたって言っていたかと思ったら、突然謝罪を始めるんだもの。
でもそんなことを気にしてはいられない。
「約束の時間に来ないから、私、教室まで行ったの。そしたらクラスの女の子と楽しそうに話をしているから。悔しくなって学校から逃げて、電話も無視してたの。本当にごめんなさい」
「何言ってるんだよ。謝るのはこっちだよ。待たせてごめん。しかも教室まで迎えに来てくれてたのに気づかなくてごめん」
「私も声、掛けなかったし、それに楽しそうだったから……」
楽しそうに話している彼の姿を思い出し、思わず俯いてしまう。
私と一緒にいるときより楽しそうだったから、声を掛けることができなかったのだ。
すると、頭上から嬉しそうに笑う彼の声が聞こえてきた。
「そりゃ楽しかったよ。だって、俺の知らない中学時代のお前の話聞いてたんだからさ」
「え、私の話?」
「そ。お前と付き合ってるって言ったら、『私、同じ中学だったんだよー』って。合唱コンクールで伴奏するくらい、ピアノ上手なんだって?」
「一応、五歳から習ってる……」
「可愛いし優しいし、いい子捕まえたねって褒められてたら嬉しくなって時間忘れてたんだよ」
彼の言葉に、心がじんわりと温かくなってくる。
あの笑顔を引き出していたのは、会話の内容が私のことだったから?
私のことを聞けて嬉しくて、あんなに楽しそうだったの?
「待ち合わせ場所に行ったらいないし。電話掛けても出てくれないし。挙句の果てに土手で知らない男と話してたから、俺、泣きそうだったんだぜ」
「……だから、男の人とは話してないんだって」
「でも、そのカラス、前世男だよな?」
「え? 私、カラスと話はしてたけれど、学ラン姿の男の子なんて見ていないよ?」
「でも、さっきまで一緒に。っていうか、カラス話してたって何だよ?」
「あのね、信じてくれないかも知れないけれど、さっきまでここで、カラスが青春してたの。思わず近づいたら、日本語喋ったの」
「……なあ、頭大丈夫か?」
怪訝そうな顔をする彼。それでも私は話を続ける。
「そのカラス、前世が人間で、彼女とケンカしたまま死んじゃったんだって。だから、後悔してるって言ってたの。だから、ごめんなさい」
困惑しまくりの彼の顔が私の瞳に映る。
そりゃ困惑もするだろう。
自分の彼女が、カラスと喋ってたって言っていたかと思ったら、突然謝罪を始めるんだもの。
でもそんなことを気にしてはいられない。
「約束の時間に来ないから、私、教室まで行ったの。そしたらクラスの女の子と楽しそうに話をしているから。悔しくなって学校から逃げて、電話も無視してたの。本当にごめんなさい」
「何言ってるんだよ。謝るのはこっちだよ。待たせてごめん。しかも教室まで迎えに来てくれてたのに気づかなくてごめん」
「私も声、掛けなかったし、それに楽しそうだったから……」
楽しそうに話している彼の姿を思い出し、思わず俯いてしまう。
私と一緒にいるときより楽しそうだったから、声を掛けることができなかったのだ。
すると、頭上から嬉しそうに笑う彼の声が聞こえてきた。
「そりゃ楽しかったよ。だって、俺の知らない中学時代のお前の話聞いてたんだからさ」
「え、私の話?」
「そ。お前と付き合ってるって言ったら、『私、同じ中学だったんだよー』って。合唱コンクールで伴奏するくらい、ピアノ上手なんだって?」
「一応、五歳から習ってる……」
「可愛いし優しいし、いい子捕まえたねって褒められてたら嬉しくなって時間忘れてたんだよ」
彼の言葉に、心がじんわりと温かくなってくる。
あの笑顔を引き出していたのは、会話の内容が私のことだったから?
私のことを聞けて嬉しくて、あんなに楽しそうだったの?
「待ち合わせ場所に行ったらいないし。電話掛けても出てくれないし。挙句の果てに土手で知らない男と話してたから、俺、泣きそうだったんだぜ」
「……だから、男の人とは話してないんだって」
「でも、そのカラス、前世男だよな?」