Perverse second
何度も二人で帰った道のりを、こんな形で帰ることになるとは思いもしなかった。



「この辺り、痴漢多かったんでしょ?だから柴垣くん、結菜と一緒に帰ってたんだよね?」



突発的な質問に、まさか下心があっての事だとは言い難い。



「ああ。けど捕まったらしいぞ。貼り紙も剥がされて、もう心配ないみたいだ」



出張前に痴漢が捕まったという知らせがポスティングされていた時は、不謹慎ながら心の中で舌打ちをしたものだ。



いつ三崎から、もう一緒に帰る必要がなくなった、と言われるかと思うと気が気ではなかったから。



結果として、そんなことも言われる間もなく拒絶されてしまったわけだが。



「柴垣さんと結菜さん、会社でも噂になってますよね?まんざらでもないんじゃないですか?」



今のこの状態の時に笑顔で言ってのけるとは……何も知らないとは恐ろしい。



「あんな噂、ほっときゃそのうち消えてなくなる」



だから安心していいんだ、と三崎に言って聞かせるかのように呟いた。



そんな噂が現実のものになるなんて可能性は、もうゼロに等しいだろう。



そうしてしまったのは自分自身で。



あの時はこんな事になるとは思わず、ひたすら三崎を求めた。



素直に身体を開いた三崎は。



今は頑なに心を閉ざしてしまった。



どんなに後悔しても、一度壊れてしまったものは、寄せ集められても完全なる修復はできないのだろう。
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