Perverse second
楠原と水田がいつの間にか後ろで雑談をし始めて、俺と三崎が二人で並び前を歩く。



笑いながら何度も通った道のりが、遠く懐かしく感じた。



やっと笑顔を見せてくれて、やっと二人で帰れたことを思い出し、そんな小さな幸せが、どれだけかけがえのない事だったのか。



やっとそれに気がつくなんて。



三崎と話さなければいけないことは沢山あるのに、何一つ言葉にすることは出来ない。



「そういや水田は竹下さんって知ってる?」



必死に会話を探したが見つからず、俺は後ろの水田に向って話しかけた。



「あ…はい、不本意ながら同期です」



「はは、不本意…ねぇ。確かに同性には敵が多そうな子だな」



「まぁそうですね。どうせ柴垣さんにも露骨にアピールしてるんでしょうね」



よくおわかりで。



竹下をよく思っていない水田に笑いかけながら、それでもあのめげない気持ちは羨ましくて。



俺の今一番欲しいものだった。




「そうだけど、あの素直さは羨ましい。あの子はいいよ」



「ええっ!?」



抗議の声を受け流しながら、空笑いを浮かべた。
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