Perverse second
確かに鬱陶しいが、自分の気持に向き合えず、いつまでも三崎を解放してやれない。



そんな自分に腹が立つから。



竹下のめげない強さは羨ましかった。



今ここで三崎を解放してやれたら、三崎は安心するのだろう。



俺の想いが暗く沈む代わりに。



そんなことを考えていたら、いつの間にかマンションの前に到着していて、俺は三崎に向き直った。



楠原たちは俺達に声を掛けることもなく、先に三崎のマンションへと入って行った。



「ほら。重いから気をつけろよ」



ずっとぼんやりしていた三崎が、弾かれたかのように顔を上げて周りを見回した。



俺は酒の入った袋を三崎の手元に差し出した。



三崎は慌ててそれを受け取ると、予想外の重みでぐっと前のめりに倒れそうになる。



俺は咄嗟に三崎の肩に触れ、彼女を支えた。



「だから気をつけろっつっただろうが」



呆れ顔で溜め息をつくと、俺は何とか三崎の肩から自分の手を放す。



その時、俺の袖口を三崎の指がキュッと掴んだ。



三崎、お前は一体何を考えているんだ?



三崎の手を振り払うことなどできるはずもなく、俺はそのまま固まってしまった。
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