Perverse second
三崎を安心させてあげられるのは今しかない。

俺は最も口にしたくなかった言葉を、三崎に伝えなくてはならないんだ。



「避けるような真似してごめんな。上手くリセットできなくてさ。けどもう大丈夫だから」



これできっと三崎は明日から、いつもの三崎に戻ってくれるだろう。



完全になかったことにすることなど出来なくても、少なくとも嫌われ怯え避けられることはなくなるはずだ。



「これ、サンキューな。明日からはちゃんと同期として仲良くやっていこうぜ」



ジーマを軽く揺らし、俺は無理に笑顔を見せた。



「柴垣くん…私は…」



「ほら、楠原と水田が待ってんだろ。急げよ。じゃあな」



嫌がられるのを覚悟で三崎の頭に手を乗せて軽く撫でると、敢えて振り向かずに自分のマンションへと進んだ。



俺はバカだ。



どうしようもないバカだと自覚している。



けれど、どうしても三崎に以前のように笑ってほしくて、馬鹿を承知で選択したことだ。



三崎が俺の好きなものを覚えてくれていた。



それだけで満足しなければいけないんだろう。



ジーマの瓶を見つめながら、明日からまた新たな苦痛の日々に耐えなくてはならないことを覚悟した。
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