Perverse second
翌日からの俺は気持ちを切り替えて、自然に笑い、自然に会話をし、本当に全てを自然にこなした。
正確に言うと、自然に見えるように……だが。
思い悩んでいた時は、こんな思いから解放されたいと切に願ったが、実際解放されてしまうと、三崎と俺を繋ぐものが何もなくなって、思い悩む材料さえもない。
それがどんなに苦しいものなのか、今やっとわかった。
全ては遅すぎてしまったけれど。
「柴垣さん、待ってましたよ。一緒に帰りましょ」
最近毎日のようにエレベーターホールで俺を待つ竹下は変わらず鬱陶しいけれど、それも少しだけ慣れてきたように思う。
やたら強引に、そして露骨に迫ってくるのには耐えがたいものがあったが、竹下は三崎の事をよく思っていないという事が分かってきた。
皆に慕われて仕事もできる三崎と自分の評価の違いに、劣等感を抱いているようだった。
竹下の性格と仕事ぶりを見れば当然の評価だが、どうも竹下は素直にそう思える性格ではないらしく、明らかに三崎を敵視していた。
おまけに三崎は俺と噂になっていたこともあり、そのことがよりいっそう竹下を煽る。
竹下には、当たらず騒がず、否定も肯定もせず、全てを流していかなければ、ひょっとしたら三崎にとばっちりが向くかもしれない。
そうしているうちに三崎と俺の噂は完全に消滅し、新たに三崎と津田さんの噂が聞こえてきた。
その事実を確認する術は、俺には一つも残されていなかった。