Perverse second
内容に具体性は何もなく、だだ仲がいいだの、雰囲気が違うだの、お似合いだの。



あの二人のイメージにピッタリのクリーンな噂ばかり。



俺の時のスキャンダラスな響きとは似つかない二人は、きっとそのうち社内公認となるかもしれない。



そうか。




ただの同期というポジションは、こういう事も全て受け流さなくてはいけないという事なのか。



指を咥えて見ているだけの自分を想像して、頭が痛くなった。



「ところで、一体いつまでついてくるつもり?」



駅のホームに向かっていた俺は、なんだかんだと、ひたすら喋りながら着いてくる竹下に声を掛けた。



「そろそろ柴垣さんちに連れてってくださいよぉ」



「俺が何で竹下さんを連れてかなきゃなんねぇの?」



「そんな固い事言わなくても、いいじゃないですか。三崎さんだけズルいですっ」



もう、この会話も何度目だろうか。



「だから、三崎とはそんなんじゃないんだって言ったろ。くだらねぇこと言ってないで帰れ」



「んもう、またそれだ。次こそは連れてってくださいね?」




「……」



ぜっっってぇヤダ。



心の中で思いっきり拒否して、「気をつけて帰れよー」と手を上げ、竹下と別れた。



女って面倒くさい。



最近は竹下に押されて、家に帰るとドッと疲れが来る。



ベッドに入れば何も考える暇なく睡魔に襲われ、あっという間に朝が来る。



そしてまた、いつもの一日が始まるのだ。



爽やかな朝に不似合いな溜め息をついて駅へと歩き出して。



俺の『いつもの朝』が一変した。
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