Perverse second
今まで一度も朝に顔を見る事がなかった三崎が、俺の前で目を真ん丸に見開いて固まっている。



「おはよ」



声を掛けるが、身動き一つしない。



「三崎?」



もしかしたら、朝から俺に会いたくなかったのか?



そう不安になったが、三崎は自然に笑ってくれて、



「おはよう柴垣くん」



と俺の隣にならんだ。



「初めてだな、朝一緒になるの」



「そうだね。私はいつも10分前には出てるもの」



「朝の10分ってデカいよな。なんかあった?」



時間には厳しい三崎が遅れて出社なんて、具合でも悪いのだろうか。



そういえば顔が少し赤い気がする。



「何もないよ。昨日なかなか寝付けなくて、寝坊しちゃった」



寝坊なんて……やっぱり体調が悪いのかもしれない。



できる限り注意しておこう。



心配していた会話も自然に盛り上がり、すっかり今までの距離感に戻ったように感じた。



乗り込んだ電車内はかなり混雑しているので、俺は三崎を窓際に引っ張ると、腕を張ってできるだけ三崎をかばった。



「毎朝これだけは勘弁して欲しいぜ。苦しくねえ?」



俺の声に顔を上げた三崎が可愛くて、「ありがとう」



と言われたとたんに抱きしめたくなってしまった。

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