Perverse second
やけに視線を感じて、俺はそろそろと三崎を見下ろした。



その途端、三崎のとんでもなく破壊的な視線に言葉を失ってしまった。



なんて目で俺を見てるんだよ、コイツは。



見つめ合った三崎は淡く頬が染まっていて、まるで泣いてしまうんじゃないかと思うほど、瞳を潤ませていた。



俺がこんなに自分を抑えているっていうのに、俺の理性を吹き飛ばしてしまうほどの三崎の表情だ。



そんな三崎の視線に耐えきれなくなった俺は、視線を逸らして小さく溜め息をついた。



「……やめろよ」



俺の声が聞こえなかったのだろうか。



「え?」



三崎は聞き返して、俺に耳を寄せる為に伸びをした。



「ちょっ……」



あまりにも近くなった三崎との顔の距離に、思わず身を引いて顔の距離を限界まで作った。



「近ぇよ。マジで勘弁して……」



少しでも横を向くと、唇が触れそうな距離だったから。



三崎の唇の柔らかさと温もりを思い出し、卑しい自分の心が嫌になる。



「……ごめん……」



三崎が何かを呟いたけれど、ちょうど最寄り駅に到着し開いたドアの音に紛れて聞こえなかった。



「行くぞ」



俺は逸れるからという大義名分のもと、三崎の腕を取って人ごみを掻き分けて電車を降りた。



このままずっと握って歩いていたい。



そう願いそうになったが、それは三崎の望まない願いだろうと思うと、なんだか情けなくなった。
< 119 / 193 >

この作品をシェア

pagetop