Perverse second
そんな三崎の心の表れか、俺の目に朝から会いたくなかった人影が見えた。



こっちを向くなと念じる俺に向かって、その人物、竹下は嬉しそうに手を振りやがった。



やはりこの手を離さなくちゃいけねぇのか……。



竹下にあらぬ誤解をされて面倒なことにでもなったら、せっかくまともに話せるまでに回復した関係性が、再び壊れかねない。



しぶしぶ三崎の手を離すと、竹下は人波をかき分けて、わざわざこっちに向かってきた。



「柴垣さん、おはようございまぁす」



竹下は三崎を一見すると、三崎とは反対側の腕に自分の手をまわし、強引に腕を組んでくる。



「おはよ」



短く返すと、過剰反応しないように無表情で竹下の腕を解く。



それでも懸命に離れず過度なボディタッチで話しかけてくる竹下に、思わず耳を塞ぎたくなった。



手が離れた途端に後ろを歩き出した三崎が気になって、何度も声を掛けるが、三崎が俺の隣に並ぶことはなく、とうとう視界から消えてしまった。



「柴垣さん、朝から三崎さんと一緒に出社なんて、まさかとは思いますけど……」



「何もねぇよ。しつけぇな」



「だったらいいですけど……。最近、三崎さんと津田さんの噂が広がって来てるの、知ってます?」



そういって笑う竹下の表情が意味ありげで、俺はとても嫌な予感がした。



「応援、してあげましょうよ。あの二人、お似合いですもん。柴垣さん、こんな風に邪魔しちゃだめですよ?……ねぇ?」



その言葉があまりにも威圧的で、おれは背筋が冷たくなるのを感じた。
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