Perverse second
「ありがとうございます」



「お礼を言うのはまだ早いよ。三崎さんの得意先を考えたらまだ足りない。僕も後で調整するね」



そういうけれど、津田さんは立場上、幅広く見なければならないため、得意先は小売店が中心だ。



そんなに回せるほどの余裕はないだろう。



「俺も調整きくと思います」



百貨店などの大手を一番持っているのは俺だ。



修正すれば何とか削れるかもしれない。



そう思って取り置きを見直そうとしたのだけれど、津田さんは片手をあげてストップをかけた。



「ありがとう柴垣。でもそれは最終手段にしてくれる?柴垣と三崎さんには数字を上げてもらわなくちゃいけないからね」



俺のようにその場の事だけではなく、瞬時に総合的に考えられる津田さんは、やはり統括主任なのだと痛感させられた。



「それよりも他店営業の取り置き状況を確認してくれる?回してもらえそうなトコあったら俺に教えて。連絡してみるから」



「俺、連絡しますよ」



「いや、俺がする。柴垣と三崎さんは営業ツートップだからね。誰しも嫉妬心はあるもんだよ」



確かに俺や三崎が連絡して在庫を回してくれと頼んだところで、快く快諾してくれる営業マンがどれだけいるだろうか。



数字で評価されるこの仕事では、俺達の足を掬いたくてうずうずしている奴が多い。



ならば余計な手出しというものだろう。



「わかりました。お願いします」



交渉は津田さんに任せて、俺は裏でサポートをするのが一番の解決策だと思い、パソコンに向かった。
< 124 / 193 >

この作品をシェア

pagetop