Perverse second
俺の言葉が少しは三崎に届いたのだろうか。



彼女は緩んだ口元を一度キュッと閉めたが、再び開いてポツリポツリと胸の内を吐き出し始めた。



「オンナだからダメなんだって。腰掛けのつもりで仕事されても困るって。いつ辞めるかもわからないオンナとは仕事できないって」



男女平等なんて建て前で。



男の本音はいつも根底で女を下に見ているのは間違いないだろう。



特に団塊世代の男性はそれが激しくて、俺も何度となく担当者が女でなくて良かったと言われたものだ。



「それでも必死で誠意を見せたの。少しづつ少しづつ関係を築いていって、ようやく信頼して貰えるようになったの。それなのに…」



堪えきれない涙が溢れ出て、三崎の頬を濡らしていく。



「めちゃくちゃ腹が立つ。すっごく…すっごく悔しいぃっ！」



絞り出すようにそう言うと涙腺が決壊したように流れはじめた。



「よく言えたな」



慰めの言葉より、同調の言葉より。



今はただ抱きしめてやることだけが、三崎を救うことになるような気がして。



俺は三崎を優しく抱きしめると、ゆっくりゆっくり頭を撫でる。



まるで子供をあやす父親のように。



今は男であるよりも、ただ三崎を包み込むだけの存在でいたかった。



今まで我慢してきた三崎の心を、辛い思いを、俺が一緒に背負ってやれるように。



我慢せず、全て出し切るまで三崎が泣けるように。
< 133 / 193 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop