Perverse second
三崎の頭を極力優しくゆっくり撫でていく。



暫くの間そうしていると、強張っていた三崎の体が少しずつ解れていくのが分かる。



少しは落ち着きを取り戻したのだろうか。



俺の胸に隠れて、小さく鼻を啜りながら手の甲で涙をぬぐっている。



そっと顔を上げた三崎は、俺のスーツの胸元を見て慌てた様子を見せた。



「あ…スーツごめんなさい…」



バッグからハンカチを取り出すと、俺のスーツのシミを拭おうとする。



それを阻止するかのようにハンカチをそっと奪うと、三崎の手を外した。



「いいから涙拭けよ…」



手にしたハンカチでぎこちなく三崎の濡れた頬をトントンと拭いていく。



自分の顔はグイっと拭いているせいか、こんな緩い拭き方で涙なんて拭えるのだろうか?



余計な事が頭をもたげたが、ここでゴシゴシするわけにいかないだろう。



女にこんな事をしたこともない俺は、根っからの紳士にはなり切れないようだ。



そう思っていた時。



思いもよらぬ出来事がおこった。



「三崎…?」



戸惑い、焦り、混乱、そして……高揚。



今の自分にどんな言葉が似合うのか分からなくて、俺は恐る恐る三崎の名前を呼んだ。



それもそのはずだろう。



あろうことか三崎は再び俺の胸にしがみついてきたのだから。



さっきよりもきつく抱きしめると、三崎はまるで安心したかのように深く息を吐いた。



「柴垣くんには…本音を言ってもいいのよね…?」



突然小さく呟くようにそう言った三崎に、



「ずっと前からそう言ってる」



俺は低くそう応えた。
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