Perverse second
三崎の背に回していた腕をゆっくりと解く。



俺の腕の中に納まっていた三崎の体がせっかく緩んでいたというのに。



鳴り響くコール音は三崎と俺の心の隙間に割り込んでくる。



「スマホ…鳴ってるぞ」



「……うん」



ゆっくりと三崎の体が俺から離れ、スマホを取りだして画面を見つめた。。



「津田さん……」



このタイミングで電話してくんのかよ、津田さんは。



三崎が慌てて画面をスライドしてスマホを耳に当てて「はい、三崎です」と名乗る。



『あ、津田です……』



僅かに聞こえた津田さんの声は、俺を息苦しくさせた。



俺の目の前で会話をすることに申し訳なさを感じているのだろうか。



チラリと俺を見上げる三崎と目が合い、俺は苦笑しながら頷いた。



「大丈夫です。先程はありがとうございました」



繰り広げられるたどたどしい会話が気になって仕方がないけれど、きっと聞こえてしまったら落ち込むことになりそうで、敢えて聞かない努力をする。


時間が経つにつれて歯切れの悪くなる三崎の返答。



俺との距離感が堪らなくなったのか、もしくは聞かれたくない会話が繰り広げられているのか。



三崎はこの場を離れようと後退る。



頭で考えるよりも先に俺の手は三崎を引き留めていた。
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