Perverse second
会社に戻り一人でエレベーターに乗り込み階数を押すと、俺は壁に背中をあずけた。



暫くすると途中で止まり、ドアが開く。



「あ」



「あ」



そこに立っていたのは、ご褒美を渡すべき相手、三崎だった。



「お疲れ」



笑みを浮かべて三崎の顔色を伺うと、「お疲れ様」と三崎は晴れ晴れしく笑って乗り込んできた。



「コーヒー買ってきたの?」



エレベーターの中に充満している香りに気が付いて、三崎は何気にそう言った。



「ああ。給湯室のコーヒー、苦手なんだよ」



「私も」



俺はコーヒーの入ったビニール袋からコーヒーを一つ取り出すと、隣で笑う三崎に差し出した。



「ほら」



「え?」



戸惑う三崎の前で、カップを軽くゆすって受け取れと合図する。



「でもこれ、柴垣くんのでしょ?」



「俺のもちゃんと買ってきた」



ビニールの中のもう一つのコーヒーの存在を確認させ、「これはお前の」と微笑む。



「ありがとう…」



申し訳なさそうに受け取った三崎に、もう一つ、チョコレートを渡す。



「あとこれも。お前がいつも食べてるヤツ、ホワイトチョコも出てたぞ?」



「ありがとう。でもいいの?」



驚いたように俺を見上げる三崎の顔は喜びいっぱいにみえる。



こんなに喜ぶなんて、買ってきた甲斐があったってもんだ。




「ご褒美だ」



「ご褒美?」



俺の真意がわからない三崎は、小首をかしげて俺に問いかける。



その仕草が堪らなくて手が出そうになった瞬間。



指定階数に到着したエレベーターのドアが大きく開いた。



「なんでもねぇよ」



そう言って咄嗟に手を引くと、照れ隠しのように三崎を残して下りて行った。
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