Perverse second
俺の一番見たくない顔は、いつもと変わらずで。
妙に意識しているのは俺だけのようだった。
「おはよう柴垣」
俺の席を横切る際に見せた笑みは嫌味がなく、それが尚更に俺を奈落に沈めた。
「おはようございます」
負けじといつものように挨拶を交わし、素早く視線を逸らすと立ち上がったばかりのパソコンでメールの確認をする。
あまり長い時間目を合わせてたら、思わず睨みつけてしまいそうだったからだ。
……負け犬のようだな、俺は。
初めての恋に初めての失恋。
みんなどうやってこんな状況を打破していくんだろうか。
失恋には新しい恋とよく耳にするが、後にも先にも俺には三崎しかいない。
失恋したから『はい、次に』なんて到底できるはずもないだろう。
思わず頭を抱え込みそうになった時。
「柴垣。ちょっといい?」
俺を呼ぶ声で顔を上げると、津田さんが手帳とタブレットというお決まりの打ち合わせグッズを手に、立ち上がるところだった。
「はい……」
気は進まないが、恋愛と仕事は無関係だ。
せめて仕事で負けないという目標だけは貫こう。
そう腹に決めて立ち上がり、俺も手帳とボールペンを手にして津田さんの後に続いた。
途中、出勤した三崎とすれ違ったが、周りに人がいたせいか、三崎はこちらに気付かなかったようだった。