Perverse second
俺はあたりを見回して誰も入っていない喫煙ルームに入って通話ボタンを押した。



「はい、柴垣です」



『あ、津田です。ごめんね、今大丈夫?』



飄々とした声が耳に響く。



喫煙ルームの煙草の臭いと空気の悪さに顔をしかめながら、俺は小さく溜め息をついた。



「ちょうど会社に戻るところです。といっても電車が遅れてるんで、もうしばらくかかるかもしれないですが。何かありましたか?」



俺がそう聞くと、津田さんは「いや、特にはないんだけど」と意味の分からない事を言ってのけた。



『俺もね、柴垣とは場所が違うけど今電車待ちなんだよ。だからちょっと付き合ってもらおうかと思ってさ』



「……は?」



何言ってんだ、この人は。



「電車くらい一人で待ってくださいよ。俺も暇じゃないんで」



冷たくあしらうと、電話越しの津田さんは『電車待ち、暇でしょ?』と笑って言った。



「今日の津田さんの行動の意味が俺には分からないんですけど。うかれてるんすか?」



三崎と付き合えたことで浮かれているのなら、それを表す相手が俺というのは間違ってんだろ。



もう少し人の気持ちも考えろよな。



そう言いたい気持ちは抑えたけれど、強い口調までは抑えられなかった。



俺の口調に気を悪くしたのか、津田さんは電話の向こうでわざとらしい溜め息をついた。
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