Perverse second
三崎の声が聞こえた途端、いろいろ考えていた事が全て吹き飛んだ。



「もしもしっ!?」



走りながら息を切らして、電話越しの三崎の存在を確認する。



「お前まだ帰ってねぇよなっ!?」



津田さんの為に、津田さんのマンションに行く途中だ、なんて言わないでほしい。



『うんっ。まだっ!』



俺の声に影響されたのか、三崎の声も大きく、そして上ずっているように聞こえた。



「絶対に帰るなよっ!」



「え、でも…」



俺の言葉に戸惑ったのか、三崎は素直に返事をしてくれない。



それはそうだろう。



恋人のところに行こうとしているのに、突然ただの同期から帰るなと言われても困るだろう。



俺なら絶対帰る。



だけど……。



「いいからっ!絶対行くんじゃねぇぞっ!」



完全なる命令口調に『はいっ!』と委縮したように返事をした三崎の声を聞くと、俺はタクシー乗り場へ向かう足を速める為に通話を切った。



今はこれでいい。



津田さんのところには行かず、俺のことを待っててくれるだけでいい。



そう思いながら乗り場につ地団駄を踏みながら前二人をやり過ごす。



物凄く長い時間待った気がしたタクシーに乗り込み時計を確認すると、時刻は十八時。



ここから会社まで裏道使って貰えば十五分で行けるか……?



気持ちだけが笑えるほど先走って、今までの行動や情けなかった自分を振り返る余裕すらなかった。
< 171 / 193 >

この作品をシェア

pagetop