Perverse second
会社に到着したタクシーから領収書はおろか、お釣りさえももらわずに、転がりそうな勢いで降りる。



エントランスを大股で歩き、ちょうど開いたエレベーターに飛び乗ると、俺は階数表示をソワソワと眺めた。



到着してフロアを駆けデスクに戻ると、そこに三崎の姿はない。



あろうことかデスクも綺麗に整頓されている。



行くなと言ったのに。



はい、と返事したくせに。



遅かったっていうのか?



まさか……有り得ねぇ……。



「柴垣さん?」



急に声を掛けられハッとすると、水田が自分のデスクでポカンとしながら俺を見ていた。



「あ……」



その存在すら目に入らなかったほど、俺は大きく動揺していた。



「そんなに急いでどうしたんですか?何かトラブルでも?」



不安そうに聞く水田に「いや、トラブルじゃない」と告げると、彼女は少し安心したように笑った。



「三崎……。三崎知らねぇ?」



恐る恐る聞いてみると、水田はあっさり「帰りましたよ」と答えた。



「帰った……?」



「はい。何だか用事があるとかで。ほっぺたピンクにしちゃって、そわそわしながら嬉しそうに帰って行きました」



ニヤニヤして意味あり気に水田はそう言うが、もう俺は何も考えられなかった。



その場を勢いよく飛び出し、エレベーターホールに向かいながら、再び三崎に電話を掛けた。
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