Perverse second
その日の詳細なんて細かく覚えているわけではない。



ただ全てがその日に変化した。



それだけだ。



その会社にも職種にも、特別な思い入れがあるかと聞かれると、正直返答に困ってしまうだろう。



勤務地や福利厚生、条件、給与、総合的に考えて魅力があった。



取り敢えず『一流商社』であれば将来的に安泰か。



そういう思惑で受けてみた。



陸には悪いがもう内定はあるし、気楽に進んでいて、受かろうが落ちようが大したことではないと思っていたんだ。



つい数秒前まで。



面接待ちで別室に入った俺は、時間が止まってしまったかのように全てが停止状態になった。



「義人。俺たち同じグループだぞ。この番号の席で順番待つんだと。……義人?」



陸から肩を揺すられて、はっと我に返ったけれど、視線が陸を捉えることはない。



それほど俺は一人の女に釘付けになったのだから。
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