Perverse second
「ほら。」



「え?」



「土産。ちゃっかりしてんな」



「ちがっ!催促の手じゃないでしょ!?」



咄嗟に出たのであろう大きめの声。



しかし慌てていつものペースを取り戻すべく取り繕う。



そういえば陸が言っていた。



三崎は皆から『高嶺の花』だと言われているのだと。



けれど今の三崎は、その言葉の重みに潰されそうに見える。



昔見た本当の笑顔を出せなくて、無理に自分を抑えているようだ。



それがかえって痛々しい。



「やだ柴垣くんたら。でもお土産ありがとう。みんなでいただきます」



三崎は作り物の笑顔を浮かべると、



「柴垣さんからお土産いただきましたぁ」



そう言いながら皆に見せ『お茶いれてきますね』と、さもそれが当たり前の行動のように給湯室へと向かったようだ。



周りを見てもそれが通常のことなのだとわかる。



先輩はもとより、後輩すらも疑問を抱かないなんてありえないだろ。



どれだけ雑務を抱え込んでいい顔してんだよ。



きっちり線引きして分担させた方がいいに決まってんのに。
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