Perverse second
電車の速度なんて気にしたことはなかったけれど。



こんなに遅かったっけ?



もっとスピーディーに発停車できんじゃねぇの?



車内で駆け足したくなるなんて表現している人を、鼻で笑ったこともあった。



けど今なら本当によくわかる。



あの日の俺に謝れと言ってやりたい。



十分遅れの電車は三崎の心の中から俺をあっさりと消し去りそうで。



それが何よりも恐ろしいと感じた。



最寄り駅に着くと、ドアが開ききるのも待てずに飛び出す。



改札口を駆け出してその差を埋めようとするのだが。



いや…マジで…勘弁してくれよ…。



大人になって走ることが極端になくなった俺の身体は、気持ちとは裏腹に全然ついてきてくれない。



くっそ。



ちゃんと体鍛えとくんだった…。



途中何度も歩きながらも、何とか自宅近くの曲がり角まで辿り着いた。



ダサく上がった息を整えるために静かに深呼吸を繰り返すと。



曲がった先にあるマンション前から、微かに話し声が聞こえた。
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