Perverse second
「せっかくのデートなのに浮かない顔してんな」



おれは自分のマグカップにインスタントコーヒーの粉を入れながら三崎にそう言った。



「デートなんかじゃないわ。ただ食事に誘われただけよ」



俺は午前中に津田さんに言われたことを思い出した。



『柴垣は何かにつけて手を回すなぁ』



『お互い邪魔しあわず、正々堂々といこうね』



笑顔でそう言われたけれど、俺には無理だ。



正々堂々とやれば勝敗は目に見えているのだから、スキをつかなければ勝てる気がしない。



さんざん嫌事を言ったあと、一言願いを込めて。



「お前、流されんなよ」



ポツリとそう呟いた。



「えっ?」



「津田さんだって男なんだよ。好きな女を手に入れたい。モノにしたいって気持ちはある。忘れんな」



少しでいいから予防線を張って欲しい。



そんな俺の気持ちはいつも。



「津田さんはそんな強引なことしないと思う」



三崎のこの言葉に砕かれる。



「お前まだそんなこと言ってんの?」



「だって津田さんだよ?」



「だから何だよ。男なら誰だって好きな女は抱きてぇんだよ」



「津田さんと柴垣くんは違うわ」



「あっそ」



やっぱりこいつは口で言ってもわからないんだな。



俺はカップをシンクに置くと、三崎に大きく一歩近づいた。
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