Perverse second
「あの子」



「ん?」



「あの子がいたから?」



陸の言葉がなくても、ずっと俺の頭から離れない女。



もう焼き付いてしまったのだろう。



「見てるだけで声もかけなかったから、ただ単に美人だったから見てただけだと思ってた。けど義人。お前…マジだったの?」



マジだと聞かれても、何をどう答えていいのかわからない。



ただ一つだけ言えることは、もう一度会いたいという事だけ。



「わかんねぇけど、とにかく俺はここに決めた。よく見たら内定貰ってる所と大差はないし。それだけで決めたわけじゃねぇから大丈夫だよ」



それからは陸の前であまり彼女の話をするのはやめた。



それでもどれだけ月日が経っても彼女の笑顔が色褪せることはなく。



とうとう他の女との関わりも薄くなってしまう始末。



それほど一度会っただけの彼女以外の女がどうでもよくなってしまった。



日に日に大きくなる彼女の存在は、もう自分の気持ちを認識するには十分なほど大きくなっていた。



そして。



いよいよ明日は入社式。



『一目惚れ』



この時はすでに俺の気持ちに名前はちゃんと付いていた。
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