極甘同居~クールな御曹司に独占されました~
『あ、いいから。ちょっと待ってて』


私が返答に迷って少し間が開いた時、受話器を手で押さえたようなくぐもった音声で、彼が誰かに答えたのがかすかに聞こえた。
その相手が男性なのか女性なのかはわからない。
でも彼が今、電話に都合のいい状況でないことは確かだった。


「ごめんなさい、特に困ってる訳じゃなくて、帰国はいつだったかなって」


『予定通り、水曜だ』


彼の帰国予定日を私が忘れるはずがない。
でも苦し紛れにそれを口実にした。

切実に聞きたいことはそんなことじゃないのに……。


「わかりました。お仕事中にごめんなさい。もう切りますね」


『柚希』


いたたまれず切ろうとした私を彼が呼び止めた。


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