極甘同居~クールな御曹司に独占されました~
『何かあったのか? 後でかけ直そうか?』


「いえ、大丈夫です。もうすぐ寝ますから」


口が心とは逆のことを言う。
こんな時に素直に甘えられたらいいのに、肝心な時、私は可愛くなれない。


『わかった』


短い返答でもう切れてしまうのだと諦めた私の耳に、続いて彼が付け足す声が届いた。


『帰ったら話したいことがある。待ってて』


〝話したいこと〟──その言葉の改まった響きに、私の心臓が一瞬止まった。


「はい。気をつけて帰ってきてください」


『うん。おやすみ』



通話が切れてから、私は上ずった気持ちが鎮まるそのまましばらく座っていた。


結果的に電話して良かったのか悪かったのか分からない。
とにかくたった数分にありったけのエネルギーを使い果たしてしまった気がする。


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