極甘同居~クールな御曹司に独占されました~
「結婚前はほとんどお料理したことがなくて、縁談がまとまった時に慌ててお料理教室に行ったんだけど、それがフランス料理教室でね。スズキのポワレだとか、鴨のテリーヌだとか、毎日食べないでしょう? 今思えば的外れだったの」


高価な鍋も買い揃えたけれど、いいところを見せようと肩に力が入り過ぎて空回りしちゃったの、とお母様は言った。


「頑張って作っても失敗するし、主人は外で食べることが多いしで、結局は買ってきたもので済ませてたの。でも、則人にはこんなものを食べさせてやればよかったって、今さらながら思うの。もっと愛情をかけてやればよかったって」


「お義母さんは十分立派に彼を育てられたと思います」


思わず口を挟んでから、呼び名で失敗していることに気づき、恐縮して頭を下げた。


「ごめんなさい。そういう立場じゃないのに馴れ馴れしく呼んでしまって」


「いいのよ。あなたさえ良ければ、お義母さんって呼んでちょうだい」


認めてもらえたのだということがゆっくりと染みこんできて、胸がいっぱいになって何も言えなかった。


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