結婚しても恋をする
旅行そのものは楽しかったが、飛行機に宿の予約はもとより、訪れる観光地やレストランに至るまで、全てをわたしが計画し、交通手段の時刻を調べ、最終日には疲れ切っていた。
郷ちゃんに協力して貰おうにも、調べ方から細かく指示しないと情報に辿り着けず、チケットを失くすので、結局わたしが管理していた。
後は帰るだけだと肩の荷が下りた気分で空港へ向かうと、格安国内線の出発が2時間も遅れたのだ。
ふたりともスマホの充電が切れてしまい、飛行機は無事到着したものの乗車すべき路線がわからなかった。
中心部までは移動出来たが、最寄り駅方面の電車は終了していた。
「家までタクシーで8千円掛かったわ……。あの時に……わたしには相談出来る人が、頼れる人が居ないって思ったんだよね……」
ふたりきりだから、誰も助けてくれないから、わたしがもっとしっかりしないと。
だけどわたしだって、いつでも正しい判断が出来るわけじゃない。
野菜とチーズのオイルパスタをフォークに巻き付けながら、清花が呟く。
「……でも郷ちゃんは、文句言わないでしょう。それは灯梨を信頼して、着いて来てくれるんだと思うけど」
「……」
落としていた視線を上げると、穏やかに細められた瞳と目が合った。
結婚生活の先輩の言葉に、じっと耳を傾ける。
「郷ちゃんって、灯梨が弱っても説教したり励ましたりせずに、寄り添ってくれるんじゃないのかな。そういう感覚の一致って、重要なことだよね」