結婚しても恋をする

月曜日の出勤前、服を選ぶ心は何処か軽やかだ。
自分で言うのも何だがお洒落な方だと思うし、「可愛い服着てるね」等とよく言われる。だが、カジュアル過ぎて色気が足りない。
クローゼットに並ぶ服を眺め、春に買ったワンピースが大人っぽいかもしれない、なんて巡らせていると、突如背後から声がする。

「月曜なのに朝からご機嫌だね……」

ぎくりと跳ねさせた肩を悟られないよう、気を配って振り返る。

「えっ……そぉ?」
「俺はいつも通り、やる気ゼロだけど」

何かを感付いたのかと肝が冷えたが、頭を掻いて呑気にあくびする姿に胸を撫で下ろす。


裾がひらひら揺れるワンピースに身を包み出社すると、図らずも宮内課長を目が捉えている自覚を持つ。
自らに呆れながらも浮き立った気分は続いていた。

「では、現地のお立会い者様を記載してお送り下さい。よろしくお願い致しますー」

つまらない問合せへの受け答えも、何処か語尾のトーンが上がっているようだ。
恋の始まりの高揚感とでも言おうか、こういう感覚は当然ながら久しぶりだった。
午前中の間に、宮内課長へ返信を打つ。

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