結婚しても恋をする
路地裏から猫の尻尾が覗いている。先が黒で根本は白だ。
そろりと近寄りしゃがみ込むと、多少警戒を表しながらも「ミャー」と鳴く。
愛らしい顔を虚ろに眺め、顎先へ手を伸ばす。
──こういう人が出てくるのは、旦那に対する不満がそのまま、愛情不足として現れてしまっている。
わたしは今も、彼を愛することが出来ているのか、わからなくなって来る。
幾らか人馴れしている黒ぶちの猫は、少しなら触らせてくれる。
しかし気まぐれでつれない相手は、すぐに走り去ってしまう。
胸に漂い始めた依存心を僅かに察知して、狭い建物の隙間に潜り込む後ろ姿を見送った。
こちらから歩み寄って行かずとも、お膳立てしてくれて、手を引いて導いてくれるような、人が決めたレールの上を歩きたい、それが今のわたしのモードなのかもしれない。
彼の分まで、全ての決定を下し続ける日々に、心底疲れ果ててしまったということかもしれない。