結婚しても恋をする
「……宮内課長」
背後から小さく声を掛けると、端正な目元を見張って振り返った。
「……藤倉さん。……見たな~?」
「……猫、お好きなんですか?」
慌てて立ち上がる様は日頃の余裕ある態度からは似つかわしくなく、意外性が可愛らしく映ってしまう。
「何、まだ帰ってなかったん? うわ、恥ずかしいやん」
「寄り道してました。わたしも猫大好きです」
堪らずくすくすと笑みを零すと、身を屈めた前の人の顔が迫り鼓動が大きく鳴った。
「誰もおらんと思っとったのに……言うなや?」
「……はい」
意表を突かれ、またしても顔を赤くしてしまう。
共有する秘密が増えたようで、胸の高鳴りは止まらなかった。
……おかしい。先程まであんなに落ち込んでいた気分は、何処へ行ってしまったのだろう?
どの分際でドキドキしているんだと自制を図ったが、上手く行かなかった。