結婚しても恋をする
冗談か卑下したのか疑問ながら前のめりに食って掛かると、真似した関西弁がうけたのか、飛び込んで来た屈託ない笑顔に射抜かれてしまう。
煩い心臓を鎮める努力をしていると、直ぐに気遣わしげな面持ちに変化した。

「……藤倉さん。こんな風に一緒におったら、誤解されてまうんちゃうか?」
「……誤解?」

宥めるような語調に、眉根を寄せ見上げる。
……どっちの意味だろう。わたしが誤解されて困る? 課長が誤解されて困る?

「……それって……わたしのこと、女に見えてますか?」

意味深発言に焦れて、場の熱に浮かされたかの如く大胆な質問が口から飛び出し、我ながらたじろいだ。
動じていないように見えて、ほんの少し前の人の瞳が揺らいだ気がした。

「……そら…………男には見えへんやろ」

……はぐらかされた、よね?
言いくるめつつも向かって来た、熱を帯びた切れ長の眼差しは、たちまち逸らされてしまった。

< 57 / 89 >

この作品をシェア

pagetop