結婚しても恋をする
黙ったまま右手を伸ばしたかと思うと、手首を掴まれ引き寄せられた。
瞬く間に後頭部へ添えられた左手に力が篭められると、一層鼓動が大きく鳴る。
瞳を見開いた時には、もう唇が重ねられていた。
そのまま抱き留められ、共々ベッドへ飛び込む形となる。
抵抗を示す隙も与えられず、首を支えられてしまっている為に、何度も降ってくるキスを躱せない。
やっとのことで身じろぎして、動きを阻むべく絞り出した。
「まっ……て……!」
僅かに停止した動きに倣うように、固く瞑っていた瞼を薄く開くと、胸元から見上げる大きな瞳と目が合った。
「……何で?」
その眼光には男の顔を覗かせていて、眩い光でも浴びたかのように目元を歪め、見つめ返した。
背徳感から疼き出した身体の芯を思い、ドクドクと不穏な音を立てる心臓を鎮めたかったが、手立てがなかった。
「……今日は……」
「生理?」
「……違うけど……」
強い眼差しから逃れようと顔を背けると、有無を言わさず郷ちゃんの動きは再開されてしまう。
たくし上げられた裾から滑り込んだ冷たい指先が、背筋を撫で上げ身体が跳ねる。
堪らず眼前の髪を掴むと、ニットを剥がれてしまい、現れた薄いシャツの上を這わせた手が脇から二の腕へと流れた。
「っは……」
そこは……さっき課長に掴まれた……。
脳裏を掠めた事実に一層身体を熱くして、細めた目尻に涙を滲ませていると、触れる指の腹がダイレクトに訴え掛けて来る。
「んぅ……っ」
緩慢な動きでタイツの中へ入り込んだ指が、脚をなぞり全身が痺れる。
わたしの最奥は、酷く焦れていた。