結婚しても恋をする
すっかり日が短くなったこの頃、宵闇を纏った街で、喉を鳴らす猫を撫でていた。
昨日の今日で心の比重を占めているのは、宮内課長なのか郷ちゃんなのか、自分でもよく解らなかった。
課長とは変わらず目を合わせていたが、それにも迫る頻度で、様々な人達と楽しげに盛り上がっている場面に遭遇する。
一歩引いた距離を保ち、ブレーキを掛けておかないと、依存心が全開になってしまいそうな危機感を抱いた。
ふわふわの少し長い毛の手触りを楽しんでいると、早々に帰宅時刻の通知が入ってしまい立ち上がる。
帰路へ着きながら、図らずも頭に浮かんで来た。
……深夜に会社の人、連れて来てくんないかな……。
冷たいフライパンにチューブの生姜を投入する。
香りが出てきたら豚肉を加え強火にする。
野菜を加え具材の焼ける音がボリュームを増し始めると、ほぼ申告のあった時間通りにダイニングの扉が開いた。
無論会社の人を連れて来ていない彼と恒常化した挨拶を交わした後、菜箸で調味料を混ぜ合わせながら告げた。
「”ミャー”、撫でさせてくれた。今日」
「良かったじゃん」
安直過ぎる名前を付けた猫についての報告も、恒常化しつつあるのかもしれない。
防寒の為に部屋着のフードを被っているから姿は確認出来ないが、背後でコートを脱ぐ気配がする。
「……後1年子どもが出来なかったら……猫飼っても良い?」
「良いよ」
例の如く即答が来て、本当に何でも良いんだなと心が翳り始めた。
猫なんて飼ってしまった日には、益々子どもが遠のくかもしれないのに。