結婚しても恋をする
もう目を合わせるのは止めていた。
食事へ行った日から、半月が経過していた。
「国道占用許可の有無については、まず専用ファイルで検索を掛けてから……」
派遣社員の席まで出向き、ディスプレイを覗き込み説明する。
彼女がファイルを開いている間、顔を上げると視線
の先へ唐突に現れた人物と目が合ってしまった。
不意打ちを食らい、瞬いた瞳を離せずにいる内に、パーテーションの向こうへ姿が消えた。
見ていた。宮内課長が、わたしを。
──えっ……どうして?
わたしの意識へ入り込んで来るの──
弾かれたように波打ち始めた胸元を押さえて、眉を顰めた。
偶然だと言い聞かせたが、視線を感じる瞬間はその後も続いた。
しかし、課長を視界の端に捉えても、わたしは目を合わせ返すことはしなかった。
低書庫の上で書類整理をする傍ら、側の通路へ向かって来ると遠目に認めると、先手を打って気付かない振りを貫いた。
見ていればきっと目線が交わってしまって、絶対に気持ちが蘇ってしまうだろうと解ったから。