結婚しても恋をする

壊れる
失う
全部全部全部

我に返って前の人を突き飛ばした。
顔面蒼白で、よろめいた課長をまともに直視出来なかった。

「……ごめんなさ……」

額を流れた冷や汗だけは感じ取ったが、事実を受け入れられないままに、居てもたっても居られずその場を逃げ去ってしまった。


業務に戻ったが、気付けばキーボードを叩く音が大きく、周囲に怪しまれやしないかと気が気じゃなかった。
落ち着かなければと苦心する程に些細なミスを連発し、一向に仕事が捗らない。
余程早退してしまおうかと考えたが、宮内課長にどう思われるのか気掛かりで、結局言い出せなかった。


とぼとぼと家路に着きながら、頭の中はただひとつ後悔の念で埋め尽くされていた。

一体何てことをしてしまったのか。

ごめん。郷ちゃん、ごめん。
ごめんなさい。課長の奥さん。
ごめんなさい。課長の息子さん。

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