結婚しても恋をする
宮内課長とは何事もなかったかのように、一定の距離が保たれていた。
元から業務上関わりがあるわけではないから、意識せずとも話すタイミングは来なかったが、お互いに避けていると肌で感じてはいた。
数日が過ぎ、このままフェードアウトするのかもしれない……そう考え始めた頃、廊下に足を進めていると背後から呼び止められた。
「藤倉さん」
そろりと振り返ると、長身の真顔がわたしを見つめている。
半身に構えた立ち姿は変わらず格好良いが、何を言われるのかと思うと肝を冷やした。
「……悪かったな」
宮内課長から謝罪が切り出され、その話に決着を付けるのかと、覚悟を決め息を呑む。
「あの時は……魔が差したんや。雰囲気に流されただけや」
何故こんなことをわざわざ言うのだろうと巡らせながら眼差しを返すが、逸らされてしまった。