結婚しても恋をする
冷静になって思えば、この人は全てをひとりで決めてしまうのだ。
わたしの意志を尋ねることもなく、関係の手綱を握るのは宮内課長で、それがリードされるということだった。
自己主張が強いわたしは、次第に不満が溜まってしまうに違いない。
随分懐き始めた猫が、わたしの指先に擦り寄った。
見上げて来たつぶらな瞳に、ごく僅かな声量でぽつりと話し掛ける。
「……おまえ、引っ越したらうちに来る?」
……なんてね。ミャーは皆のミャーだから。
溜息を零した顔には、何故か微笑みが浮かんだことを自覚した。
気持ちは不思議と晴れていた。
「なんかあった? あれから」
隣に座った千雪が、こっそりと耳打ちして来た。
今回は5名の大人数で、新年会と称したランチバイキングへやって来た中、皆が席を立った隙に声を掛けたのはわたしへの配慮に思えた。
質問の意図を理解して、返事を捻る。
「……うーん……言われた通り、こっちから行かないようにしてたつもりだったんだけどね……」
「……あったんだ……?」
張り切って料理を取りに向かった璃海を遠目に眺め、視線を彷徨わせてから答えた。
「……何もないって言うと嘘になるけど……でももう、近付かない。これ以上は、踏み込まないよ」
「……それが良いよ」
頷いてサラダにフォークを刺した彼女が続ける。
「……何か整理が付いた風には見えるから、良かった。自分の中で納得したんじゃない?」
「……そう……なのかな」
それ以上追求はせずに、目元を細めてまた優しい微笑みをくれた。