結婚しても恋をする
バレンタインを前に、郷ちゃんプロデュース第2弾をお願いしたのが間違いだったのか。
眉を顰めてスマホと睨み合いをする人をの動きを伺うが、一向に本来の目的地が判明しない。
日は落ちて気温も下がり出すこの時刻、行くあてもなく突っ立っているのは辛い。
「ありえないっ!! もう無理っ寒い! どうでもいいから何処か入る」
繁華街へ踵を返すと、一番近くて入りやすそうだと判断したファーストフードへ足早に駆け込んだ。
「わたしホットココア」
レジ前でそれだけ告げると、会計も品渡しも待たず空いた席へ真っ直ぐ向かい、どかりと腰掛けた。
苛立ちも沸点を迎え、手足を組み瞼を閉じる。
わたし、なんでこの人と結婚したんだったか……。
カップを手にやって来た人は、前の席へ腰を下ろすと店の捜索を再開した。
深まった眉間の皺を自覚したが、言いたくもない台詞を口に出さずに居られない。
「……ねぇ……何か言うことないの?」
我ながら嫌な言い方だと心の隅でげんなりしたが、怒りが勝っていて抑えたいとも思えなかった。
「……ごめん」
一言告げると、やはりテーブルへ視線を落とし黙り込む。
わたしも腕時計へ目線を下げると、時刻は間もなく18時半を迎える。
土曜日の夕飯時に、こんな都会では何処の店もいっぱいだろう。完全にディナー難民だ。