心をすくう二番目の君
昼下がり、社員証を翳して外へ繋がるドアを開けると、いつか聞いたように背後からカシャカシャと軽い音が追い掛けて来た。
締まり掛けた扉を振り返ると、細い指が滑り込む。
中薗さんが顔を覗かせた。
共に廊下へ出ると、少し身を屈めて耳元へ口を寄せた。
途端、心音が速度を付ける。切り出された言葉に耳を澄ました。
「あのさ、今日は最後まで居ないといけないんだけど、付き合ってくれない? そんで、何か食べよ」
振り仰ぐと、はにかんだような顔と目が合った。
頬が染まってしまったことを自覚しつつも頷くと、前の人がストラップ代わりにしている革紐が、視線の先に映り込む。
不意に頭上に掌の感触を把握した。
手の主の顔を、再度見上げる。軽く頭を撫でて微笑んだかと思うと、去って行った。
一体何度、心臓を掴みに来るんだろう。
わたしの心に居座る彼が、大きくなって行く。
今日は課長が休みの為、施錠はリーダーである中薗さんへ託されているらしい。
付き合うと言っても、わたしは仕事もないのに残業するわけにも行かない。
もし彼にも手透きがあるなら、時間内ではなかなか聞けない、込み入った業務の詳細を尋ねるチャンスだ。
先日から頭を悩ませていた問題について、打ち明けられる良い機会でもあるかもしれない。
片付けておくべき仕事は済ませた。
人が少なくなって来た頃合いを見計らって、空いた隣席に腰掛ける。
何か書き込んでいた手元から、こちらへ顔を向けた。
「現地調査の流れ、詳しく教えて頂けないですか?」