心をすくう二番目の君
機縁

勤め先のビルはビジネス街の一角にある。ランチタイムには路上での弁当の販売が盛んに行われている。
コンビニも通勤途上の弁当屋も飽きてしまい、近頃はよく買いに出ていた。

降り出しそうな曇り空を見上げつつ、足早にビルへ戻る。
エレベーターホールへ向かうと、見知った第1施工部の女子社員がふたり、下降して来る箱の到着を待っていた。

「お疲れ様です」

挨拶を交わし、共に中へと乗り込む。
上昇して行く階数表示を見上げていると、不意に会話が耳に入って来た。

「射場係長、タキシード何色かな。素敵だろうなぁ~」
「何気に射場係長に憧れてるでしょ……」

意表を突かれて、思わず視線を投げてしまう。
目が合った彼女に、話し掛けられた。

「もしかして、小椋さんも呼ばれてる? 射場係長の結婚式」
「……いえ、わたしは……。もう、近いんですか?」

騒めき出した鼓動が、大きく響いている。焦燥に駆り立てられたのか、質問を返していた。

「うん、今度の土曜日だよ」
「そうですか……晴れると良いですね」

「本当だよねージューンブライドとか言って、日本は梅雨だってね」

式の時期などは聞かされておらず、全くの初耳だった。
単に人数の関係なのか、契約社員だから呼ばれなかったのか、はたまた彼なりに気遣いが働いたのかは、わからなかった。

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