心をすくう二番目の君
見覚えのあるバックルに目を奪われる。
刻まれているのは“H”のアルファベット。
瞬間、繋がってしまう。
どうして気が付かなかったのだろう。
彼女の名前は、“ネミ”なのだ。
“N”が中薗のNなわけないじゃないか。
ペアのブレスレットをストラップ代わりにしていたのだと悟り、寄せそうになった眉根を春志の声に遮られた。
「ごめん小椋さん、今日はこれで……」
「……はい、お疲れ様で……」
わたしも一刻も早くこの場から逃れたく、安堵の色を浮かべたものの、叶わなかった。
ネミさんが悪びれる風もなく、提案する。
「どうして? 春志、私オグラさんと話してみたい。春志の仕事中の話、聞いてみたいな」
「何言ってんだよ、迷惑だろ」
ばつが悪そうに、ちらりとわたしの顔を伺った。
その時、初めて沸き上がった感情を何と呼ぶのだろう。
敵対心とでも言うべき情動に襲われた。
「……大丈夫ですよ。中薗さんの彼女さんの話はよく噂になってましたから。わたしも興味あります」
先程まで逃げ出すことばかり考えていたのに、どういうわけか口を突いて出ていた。
最上級の笑顔を向けると、ネミさんもにっこりと微笑み返して来た。