心をすくう二番目の君
「……その時……木蓮が、咲いていましたか……?」
わたしの言葉を聞くと長い睫毛を数回瞬かせた後、その美しい顔に僅かに不快感を表した。
「……よく知ってるね。春志、そんなことまで話したの?」
彼女の態度から、予感は確信に変わった。
木蓮は、ネミさんとの想い出の花だったのだと。
思い至った憶測に取り巻かれて、その後はあまり言葉を発せなかった。
「小椋さん、今日はごめんね」
「いえ。おふたりとも気を付けて」
眉を下げた彼は幾ばくかこちらを見つめた後、背を向けた。
ネミさんを腕に絡み付かせ、地下へと潜って行った。
ふたりの姿が見えなくなった後も、暫しそこから動き出せずに立ち竦んでいた。
突然尋ねて来たネミさんに対し、鬱陶しいとでも言いたげな冷たい態度に感じた。
それでも、揃いのブレスレットを毎日首に提げている。
『俺は、桜が咲くと木蓮が終わるから嫌いだった』
今も尚、彼女との想い出を大切に胸に保っている──
やっと駅へ向かって一歩踏み出した足元を見つめながら、わたしの心は晴れないままでいた。
ネミさんと3人になったことを春志はてっきり責めるかと思っていたのに、その後触れて来ることはなかった。
しかしわたし達の間には何処となくきまり悪い空気が漂ったまま、幾日か過ぎ去った。